〇山行地 奥只見・丸山スキー場~未丈ヶ岳~毛猛山~檜岳
〇山行日 2011年5月2日~5月4日
〇メンバー 中村(単独)
会越の山を歩いていると、道が無く奥深い風格ある山々がいつも気になっていた。川内、村杉半島、南会津など残雪期に登られることの多い山々。それらの中でも個性的な名前の毛猛山は前々から知っており、幾度か下見をした後、2008年4月に足沢山から一泊して訪れることができた。しかしその山行の時、毛猛山登頂を意識しすぎて檜岳は登らずに下山してしまった。山塊の中でひと際目をひく鋭鋒でありながら、主脈から少し外れているため辿る人の稀な山。この時の心残りを晴らすため3年後、別ルートからの縦走を試みた。
2011年5月2日
奥只見丸山スキー場の朝一のリフトに乗る。強風で何度か停まるものの第2リフトに乗り継いで、かうのき沢源頭のゲレンデに降り立つ。広大な雪原で、地形図とコンパスでルート確認。西側に見える顕著な尾根を目指す。薄いヤブをこいで尾根に乗り上げ北上。P1225から西に進路をとり一旦下降。すぐに登り返しP1228へ。ガスで見通しは悪いが雪はしっかりしており、すっきりした尾根筋なので不安はない。日向倉山方向からの尾根との合流点のP1376から北へルートを取りヤブを下降。緩い緩い雪面の登りから急傾斜のヤブと雪のミックス斜面の末、未丈ヶ岳に着く。視界が悪く、コンパスで進路確認して北東に伸びる尾根を下降するのだが、広大な雪面であり枝尾根も多く不安が募る。雨も降り出し、幕営地を探しながらの歩行になる。赤柴山への登りは急なヤセ尾根で、雪はなくひどいヤブだ。途中から西側の赤柴沢源頭の雪渓へ逃げ、赤柴山ピークの直下で尾根に戻る。尾根右側のしもご沢方面には崩れかけの雪庇が残っており、大鳥岳まで小さなアップダウンが続く。雨は降ったり止んだりで体も冷えてきた。大鳥岳北西の立柄沢源頭P1318の雪面で幕営。明日の好天を信じ早めの就寝とした。
5月3日
夜明け前にスタート。村杉半島の山の端からの日の出を眺めながらの稜線歩きの始まり。気持ち良い晴天で雪も堅く締まり快適。ベースに荷を置いての歩行なので、昨日とは大違いの快調さだ。二の沢の頭まで北西に進み、その先の一の沢山のピークを巻いて大熊沢源頭の雪面をトラバース。急斜面だがアイゼンが小気味良く効いてくれる。P1116から北東に稜線が曲がり、毛猛山まで続いている。山頂直下は短いながらも密ヤブなのでアイゼンをはずした。三角点以外なにもない山頂だが眺めは抜群で会越の道無き山々に見とれる。行かねばならない山が山ほどある。「行きたい山はネットではなく山で見つける」この当たり前の行為を改めて体感できて新鮮な気持ちになった。毛猛からは急なヤブ尾根を下り、雪の鞍部からは右側の雪庇に注意しながら中岳を通過。ちょっとした岩場を越えて百字ヶ岳へ。ここから今回の目的地、檜岳を目指す。豪雪だったこの年、雪は割りと豊富に残っており、ヤセ尾根ながらほとんど雪をつないで歩くことができた。一ヶ所だけかなりの急なヤブ下りの場面があり、怖くなって右側に僅かに残るカリカリの雪面をバックステップで下降した。檜岳への最後の登り。北面は断崖だが南面はそれほどでもない。山頂に着くと黒又川周辺の新緑が、まるで山を駆け上がっていくような生命力の躍動する眺めだった。感慨に浸っていたのは十数分だったと思う。ベースへの長い帰路を思い、来たルートを戻る。ベースが近づくにつれて雨雲が現れてきて不安だったが、なんとか日没までにテントに入ることができた。
5月4日
一日目と同じルートを戻るだけなので、のんびりテントを撤収。初日に見えなかった未丈ヶ岳の巨大なことにゲンナリ。これを越えるのは、まことに辛いことだった。途中で安物のアイゼンが壊れてしまい、赤柴山の雪面を下れず余計なヤブこぎが加わった。穏やかな天気のもと丸山スキー場は大盛況で、なるべくリフトの下を通りながら時にゲレンデをボコボコにしながらの下山になった。
今回の山行で以前からの思いを遂げることができたが、まだ前毛猛を残したままだ。次に訪れることがあれば、浅草岳から六十里越を経て前毛猛を目指したいと思う。