○妙高・大田切川上流域の神仏・・・不動堂、薬師堂など
○投稿者 なめこタン
関山神社縁起によれば、「人皇43代元明天皇の和銅年間、裸形上人の開基で、関山三社大権現と称した。のち人皇52代嵯峨天皇の大同年間、弘法大師が当山に参籠し、本社並七堂伽藍を造営し、真言密教修行の道場とした」とあり、神社は多くの人が知る通り極めて仏教色の強いものである。
弘法大師空海といえば真言宗の宗祖であり、天台宗最澄とともに、日本に密教思想をもたらした二大天才とされる。真言宗はご本尊大日如来と一体化することを修行の中心とし、即身成仏を究極の目的としている。如来、菩薩、明王などすべての仏は大日如来の化身とされ、とくに不動明王は大日如来そのものともいわれている。
晩秋の一日、山へ登るほどの時間もないため、関、燕温泉あたりをうろうろしてみた。
赤倉から関へ向かう林道が大田切川を渡る手前に“大滝(不動滝ともいわれる)”を一望できるビューポイントがある。やや距離があり過ぎのため滝の迫力は伝わらないが、紅葉を含めてそこそこの観光ポイントでもある。
滝下へ降りるには関温泉から続く遊歩道があり、林道口には延命地蔵が建てられ大瀧不動尊参拝道入口と記された標柱がたつ。急な下りを5分ほどで滝下に着く。大滝は落差20mといわれているが、かつてはもっと高さがあったとされる。上部が欠損したか、滝壺が埋まったものかは知らない。左岸にはコンクリート製の不動堂があり、格子戸には鍵がかかっておらずチョット覗いてみた。
不動尊らしく霊神名が書かれた木柱が祀られ、大岩に明王、童子二体の不動三尊が描かれている。古くは彩色されていたようで名残りが少し感じられ、いくつものお札や剣が奉納されている。「大瀧大日不動明王」と記され、さて手を合わせようとしてふと考え込んでしまった。
不動明王であれば仏様であり合掌が礼拝様式だろうが、霊神柱があれば神様なのだろうか・・・。? ? ? まあどっちでもいいや、といったところで合掌と柏手の両方を行う。神仏にたいする信心が足りない者はこんなものである。
車へ戻り燕温泉に向かう。燕はすでに雪がきており、温泉街というには寂しすぎる道を歩く。最上部薬師堂参拝道の下には、土産物屋と食堂を兼ねた大日屋がある。ここもまた真言密教に関わる一軒なのだろうか。
階段を上った薬師堂には薬壺を持った小さな薬師如来坐像が祀られ、燕温泉開湯縁起が書かれる。よく読めばフフッと微笑んでしまうようなことも書かれており楽しい。このお堂もまたコンクリートで作られており、やや風情にかけるものだが、雪崩を含めた雪害を避けるためには仕方ないのであろう。薬師如来は現世利益のある仏様であり、阿弥陀如来のような浄土利益の仏様とはやや異なるという。妙高登山の安全を願うにはありがたい仏様なのだろう。
お堂すぐ上の無料露天風呂「黄金の湯」はこの寒さではとても入浴する気になれない。舗装された歩道の最後には山の神大山祗命の石碑がたち、脇の小さな石祠の中には両手を合わせた小さな石仏?、神像が認められる。ここが滝見台と呼ばれる惣滝、権現滝の展望台である。水量を減じた滝はここでも迫力不足だが、落差80mの惣滝下の左岸にも不動堂があり、修験者の行場であったといわれる。そういえば温泉街入口にある旅館花文前の駐車場の一角には不動明王の石碑があり、冬季など惣滝へ行けない場合はそこで信者が手を合わせているのかもしれない。
滝と不動明王には切っても切れない縁があるらしい。今年噴火し、たくさんの犠牲者を出してしまった御嶽山をはじめ、多くの滝には不動明王など神様、仏様が付きまとう。
妙高山系随一の瀑布「苗名の滝」の場合はどうなのだろう。どなたかご存知の方がおられたらご教示願えないだろうか。いずれにしても妙高山にはたくさんの神様と仏様がいらっしゃるようである